鈴鹿8時間エンデューロレースに参加して5年目を迎える2007年。その年の夏、いつもと違ったかたちで参戦を決意しました。最新のアレックス モールトン バイシクル(20"ホイール)を、現段階で考え得る限界まで改造し、スモールホイールの自転車、いわゆる小径車がロードバイク(27"ホイール)にどこまで近づけるのか挑戦してみようと考えたのです。
モールトンの場合、乗り手がプロの選手であったとしても、普通に車両を組み立てるだけではロードバイクに太刀打ちすることはできません。なぜなら、単純なところでいうと車輪径の違いがあります。加えてサーキットのようなフラットな路面では、しなやかなモールトンのサスペンション機能が仇となり、パワーロスが発生してしまいます。シルキーライド(絹のような走り)を体感させてくれるサスペンションが、レースという局面では大きなネックになってくるのです。モールトンは、小径車の中でも特殊な設計をしているため、車輪径だけでなく、構造面なども通常の“自転車マニュアル”などは通用しないのです。
ではなぜモールトンで挑もうと決めたのか。そこで脳裏に浮かぶのが、モールトン博士も開発に加わっていたミニ・クーパー が巻き起こした、1964年~67年のモンテカルロラリー(※1)です。小径タイヤ、小排気量のミニが、その小さく華奢な体でどうしてあのような結果を生み出すことができたのしょうか。
モールトン博士は当初より「ミニクーパーで起こした革命を自転車でも起こしたい」と言っていました。その後、1986年に小径車ながら、その当時の世界最速記録82.53km/hを樹立。それから20年、日々進化しているモールトンバイシクルから、現在までに様々なシリーズが誕生し、モデルチェンジが繰り返されてきました。モールトンバイシクルもミニクーパーのように“諦めなければ必ずチャンスは訪れる”のです。だからこそチャレンジしようと思ったのです。